公認心理師と臨床心理士について

公認心理師とは?臨床心理士とは?

公認心理師と臨床心理士の違い

心理カウンセラーやメンタルトレーナーなど、メンタルヘルスに関連する資格は多くありますが、その中で、代表的な資格としては、公認心理師と臨床心理士があります。

前者の公認心理師は、2018年に最初の国家試験が実施された、国内初の心理職としての国家資格です。心理学の全範囲を網羅した基礎的な資格と位置づけられており、専門的知識や技術を用いて保健医療をはじめ教育福祉や産業分野、さらには司法分野で心理に関する支援を行います。2017年度から施行された「公認心理師制度」はまだ新しく、始まったばかりということができます。

それに対し、臨床心理士は、1988年12月に第1号の臨床心理士が誕生して以降の35年間の歴史があり、公認心理師制度ができる前までは、民間資格ではありながらも事実上、心理の専門職として働くには必須とされた資格でした。

現在、従来から臨床心理士として活動していた多くの人が、公認心理師資格も取得しており、公認心理師と臨床心理士の業務の違いについては、限られた一部の領域を除いて(→後述『公認心理師とは』参照)、 明確に区別することは難しい状況です。また、公認心理師と臨床心理士は、どちらもが 【医療・教育・産業・福祉・司法】 といった5つの領域にまたがる資格であり、それぞれにおいて、資格による業務の独占はされていません。

公認心理師とは?

公認心理師法は、2015年9月9日に議員立法により成立し、9月16日に公布、2017年9月15日に施行されました。この法律は、文部科学省と厚生労働省との共管であり、2018年に最初の国家試験が実施された、国内初の心理職としての国家資格となりました。公認心理師の業務としては、「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」です。公認心理師法第2条に以下のように定められています。

  1. 理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること(心理アセスメント)。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと(心理面接)。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

公認心理師と臨床心理士とで異なる点は、特に医療現場で見受けられます。従来、臨床心理士は臨床心理技術者として診療報酬の加算対象でしたが、2018年度からは公認心理師だけが診療報酬の加算対象となっています。参考:厚生労働省「公認心理師」

臨床心理士とは?

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格であり、昭和63年にスタートし、令和5(2023)年4月1日現在で40,749名の「臨床心理士」が認定されています。臨床心理士は、臨床心理学を用いて支援を行う「心の専門家」と称され、クライエントそれぞれの価値観を尊重し、その人の自己実現をサポートする専門家であり、他の専門家とは異なる専門性を持っています。臨床心理士は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる心理専門職の資格です。この資格を持つ者は、学校現場や他の様々な場面で活躍しています。

臨床心理士の専門業務は、公認心理師と同様に、以下の4つが挙げられています。これらは、「臨床心理士資格審査規程」第11条に“臨床心理士に求められる固有な専門業務”として記されています。その主旨を要約すると以下の通りです。

  1. 臨床心理査定:種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにすることを心理査定(アセスメント)といいます。これにより、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいか明らかにしようとします。加えて、他の専門家とも検討を行う専門行為といえます。
  2. 臨床心理面接:臨床心理士とクライエントとの治療契約をもとに、臨床心理学的技法(精神分析、夢分析、遊戯療法、クライエント中心療法、集団心理療法、行動療法、箱庭療法、臨床動作法、家族療法、芸術療法、認知療法、ゲシュタルト療法、イメージ療法など)を用いて、クライエントの心の支援を行う中心的な専門行為です。
  3. 臨床心理的地域援助:専門的に特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行うことも臨床心理士の専門性を活かした重要な専門行為となります。これらのコンサルテーション活動は、個人のプライバシーを十二分に守りながらも、コミュニティ全体を考慮した心の情報整理や環境調整を行う活動ともいえます。また、一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供や提言する活動も地域援助の業務に含まれます。
  4. 上記の1~3に関する調査・研究:心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施します。心理臨床の個別性に由来するさまざまな問題や課題に関する特化した研究技法ともいわれる“事例研究”の体験学習は、臨床心理士に求められる大切な専門業務と直結しています。高度専門職業人として、自らの専門資質の維持・発展に資するきわめて重要な自己研鑽に関する専門業務といえるでしょう。

参考:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

公認心理師になるには

公認心理師への道は決して平坦ではなく、いくつものハードルがあります。公認心理師国家試験の受験資格を得るには、大学と大学院それぞれで公認心理師カリキュラムを修了することが必要です。また、大学院に通学せず、認定施設で養成プログラムに参加した上で実務経験を積むルートも用意されています(下記)。

ルートA
4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+大学院にて省令で定められた10科目を履修
ルートB
4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験
ルートC
4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+外国の大学院で心理学を履修
外国の大学で心理学を履修+日本の大学院にて省令で定められた10科目を履修
外国の大学で心理学を履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験
外国の大学で心理学を履修+外国の大学院で心理学を履修
外国の大学院で心理学を履修+外国の心理職資格を有する
ルートD
(経過措置)公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に大学院にて省令で定められた10科目を履修
ルートE
(経過措置)公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+同法の施行後に施行後に大学院にて省令で定められた10科目を履修
ルートF
(経過措置)公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験

ルートB、C、Fで条件として挙がっている認定施設とは以下のとおりです(2023年3月時点)。

更に詳しくは、心理研修センターHPや厚生労働省のHPをご確認ください。

公認心理師のカリキュラム

公認心理師となるためには、学部・大学院で修めるべき科目があります。

参考:厚生労働省「公認心理師について」
到達目標 大学における必要な科目 大学院における必要な科目
  1. 公認心理師としての職責の自覚
  2. 問題解決能力と生涯学習
  3. 多職種連携・地域連携
  4. 心理学・臨床心理学の全体像
  5. 心理学における研究
  6. 心理学に関する実験
  7. 知覚及び認知
  8. 学習及び言語
  9. 感情及び人格
  10. 脳・神経の働き
  11. 社会及び集団に関する心理学
  12. 発達
  13. 障害者(児)の心理学
  14. 心理状態の観察及び結果の分析
  15. 心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)
  16. 健康・医療に関する心理学
  17. 福祉に関する心理学
  18. 教育に関する心理学
  19. 司法・犯罪に関する心理学
  20. 産業・組織に関する心理学
  21. 人体の構造と機能及び疾病
  22. 精神疾患とその治療
  23. 各分野の関係法規
  24. その他
  1. 公認心理師の職責
  2. 心理学概論
  3. 臨床心理学概論
  4. 心理学研究法
  5. 心理学実験
  6. 知覚・認知心理学
  7. 学習・言語心理学
  8. 感情・人格心理学
  9. 神経・生理心理学
  10. 社会・集団・家族心理学
  11. 発達心理学
  12. 障害者(児)心理学
  13. 心理的アセスメント
  14. 心理学的支援法
  15. 健康・医療心理学
  16. 福祉心理学
  17. 教育・学校心理学
  18. 司法・犯罪心理学
  19. 産業・組織心理学
  20. 人体の構造と機能及び疾病
  21. 精神疾患とその治療
  22. 関係行政論
  23. 心理演習
  24. 心理実習(80時間以上)
  1. 保健医療分野に関する理論と支援の展開
  2. 福祉分野に関する理論と支援の展開
  3. 教育分野に関する理論と支援の展開
  4. 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
  5. 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
  6. 心理的アセスメントに関する理論と実践
  7. 心理支援に関する理論と実践
  8. 家族関係・集団・地域社会おける心理支援に関する理論と実践
  9. 心の健康教育に関する理論と実践
  10. 心理実践実習(450時間以上)

臨床心理士になるには

臨床心理士の資格は、心理学を専攻する指定された大学院修士課程を修了後(下記ルート)、資格審査(年1回の筆記・口述試験)に合格した場合に、日本臨床心理士資格認定協会が認定するものです。また、資格取得後も5年毎に資格更新審査が行われ、心理臨床能力の維持発展のために、研修や研究が義務づけられています。

ルート1

臨床心理士資格認定協会が認定している指定大学院(1種、2種)を修了し、次の必要な年数の心理臨床経験*を積んだ者

  • 第1種指定大学院の場合 … 不要
  • 第2種指定大学院の場合 … 1年以上の心理臨床経験
心理臨床経験…教育相談機関、病院等の医療施設、心理相談機関等で心理臨床に関する従業者(心理相談員、カウンセラー等)としての勤務経験。無給のボランティアや研修員等は対象外
ルート2
臨床心理士資格認定協会が認定している専門職大学院において、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了した者

更なる詳細および受験要件となっている指定大学院、専門職大学院の一覧などは、日本臨床心理士資格認定協会の公式サイトや、下記のリンクに詳しく紹介されていますので、ご確認ください。また、数は少ないですが通信制カリキュラムのある大学院もあります。

臨床心理士のカリキュラム

必修科目から5科目16単位、選択必修科目群(A,B,C,D,E)からそれぞれ2単位以上、計10単位以上、合計26単位以上を修得が必要とされています。

必修科目・単位
  • 臨床心理学特論:4単位
  • 臨床心理面接特論:4単位
  • 臨床心理査定演習:4単位
  • 臨床心理基礎実習:2単位
  • 臨床心理実習:2単位
参考:臨床心理士資格認定「大学院指定申請に関する参考資料」
選択必修科目群
A群 B群 C群 D群 E群
  • 心理学研究法特論
  • 心理統計法特論
  • 臨床心理学研究法特論
  • 人格心理学特論
  • 発達心理学特論
  • 学習心理学特論
  • 認知心理学特論
  • 比較行動学特論
  • 教育心理学特論
  • 社会心理学特論
  • 人間関係学特論
  • 社会病理学特論
  • 家族心理学特論
  • 犯罪心理学特論
  • 臨床心理関連行政論
  • 精神医学特論
  • 心身医学特論
  • 神経生理学特論
  • 老年心理学特論
  • 障害者(児)心理学特論
  • 精神薬理学特論
  • 投映法特論
  • 心理療法特論
  • 学校臨床心理学特論
  • グループ・アプローチ特論
  • 臨床心理地域援助特論

公認心理師試験について

公認心理師試験は、これまでに第6回まで実施されています。合格率については、第1回は約80%と高めでしたが、第2回~第5回は50%前後です。試験の形式は、マークシート形式の多肢選択方式試験で、問題数は154問です。配点は、一般問題が1問1点、事例問題が1問3点で、正答率60%以上で合格とされています(問題の難易度で補正するという考え方を基に決定することになっています)。試験時間は午前と午後の各120分ずつです。試験会場はこれまでは全国各所でしたが、第6回目からは東京都と大阪府の2都府で行われています。試験時期は、第7回目以降、毎年3月頃に試験を実施することになっており、他の医療・福祉系の国家資格と同様に、同月の合格発表を経たうえで、4月から(有資格者としての)勤務が可能となります。参考:日本研修センター

臨床心理士試験について

臨床心理士の一次試験は、マークシート形式の多肢選択方式試験(150分)と、定められた字数の範囲内で論述する論文記述試験(90分)の2種類で構成されています。ただし専門職大学院を修了した場合、論文記述試験は免除されます。二次試験の面接試験は、一次試験の多肢選択方式試験の成績が一定の水準に達した人のみ実施されます。面接形式は、面接官2名、受験者1名であり、面接時間は15分程度です。面接試験では、臨床心理士としての基本的な姿勢や態度、専門家として最低限備えておくべき人間関係能力を問われます。合格率は、65%前後となっています。試験の時期は、例年10月から11月にかけて、東京で実施されます。参考:臨床心理士資格認定協会|臨床心理士になるには

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